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「ブンミおじさんの森」がなぜいいのか

実空間では何度も言っているが、「となりのトトロ」がとても好きだ。といっても古びた民家での生活の描き方とか、そういうことではなく、ラストシーンがとにかくよい。

ラストシーンというのは、お母さんが病院のベッドに横たわりながら、娘たちからの手紙を読むシーンである。ひとしきりお母さんが手紙を読み終わり、ふと窓の外を見ると、娘たちの気配のようなものを感じ取る。でも、そこは家から遠く離れた病院のそれも2階(3階かも)。そんなことがあるわけない。しかし、そこには娘たちの手書きのメッセージがそえられた木の実が置いてあった……。

常識的に考えれば、このシーンは「シックスセンス」のようなホラーとかサイコな映画のそれに近いと思われるのだが、不気味さや恐怖を感じさせないのは、それ以前のシーンで、いかに娘たちが母親と一緒に生活したいか、その渇望の程度を徹底的に描写していたからにほかならない。親子の絆が不自然さを上回ったことで、こうした超常現象的なシーンを、いい話として受け止めることができるようになっている。

で、なにが言いたいかというと、アピチャッポンの「ブンミおじさんの森」も、主人公のブンミおじさんを中心とする家族の絆とそれを示唆する超常現象という構図が頻繁に出てくる。しかし、絆の描き方がやたらとうっすらとしているため、ブンミおじさんの周囲で超常現象が頻発しては、ブンミおじさんがそれをぼんやりと受け止めるというシチュエーションとなり、家族の絆がどうこうよりも端的に不気味である。

最初はやたらと違和感があったのだが、1時間半もこうしたことが延々と続いていくと、見ている方も次第に慣れてきて、次第にブンミおじさんが家族に対して、あるいはそれまでの人生に対してどのような思いを持ってきたのがが分かるようになってくる。
それはあくまで副次的な効果であって、ともかく単純に周囲で超常現象が頻発してるのに、あっさりそれを受け入れまくる状態はかなりヤバいと思った