月別アーカイブ: 2012年10月

あなたは私の誇り

ドン・ハーツフェルト「あなたは私の誇り」を見た。以下、雑感。

まるで鏡のような作品。作品を通じて自分を見ているようだ。作中では主人公自身の生い立ちや家族のことが淡々と語られるが、どこか自分のこととして捉えてしまうようなところがある。どんな美術作品でも、鏡として機能する要素は多分に含まれるが、とりわけその純度が高い。おそらくこれは、ハーツフェルト作品特有のキャラクターの簡素さと、ところどころ使われる実写素材およびフィールドレコーディング音源との対比が大きな効果を発揮していると思われる。

それを踏まえて、感動したポイントが2点。

1) バス停での長回し

清掃業者がブロワーでゴミを吹き飛ばし続けるだけの一見退屈なシーンだが、ラストに待ち構える多幸感を引き出すラッシュの伏線になっていて、作者の冷静さ、構成力を窺わせる。具体的にはこのブロワーの響きが、冒頭の一瞬だけ、BGMの旋律とちょっとしたハーモニーを奏でる。だから、見る側は「あれ?これ偶然?それとも狙ってやってんの?」みたいな感じで、ぼんやりと疑問を感じながら、ふたたびハーモニーが起きるのを待ってしまう。しかし、1分近く待たされた上、なにも起きない。このときの主人公は、微動だにしないが、その様子が観客と強くシンクロしている。
こうした自分の生活を取り巻く偶然なんだか、必然なんだかよく分からないことに対して向き合っていくことがこの作品に通底するテーマであることが徐々に明らかになっていくが、その象徴的なシーン。

2) 母親のメモ

主人公の母親は、主人公が小さい時、たまに弁当箱に「I AM SO PROUD OF YOU(あなたは私の誇り)」というメモを忍ばせていた。母親の死後、そのメモのための膨大な下書きが発見される。個人的には、母親がそんな小さなメモのために下書きをしていたということよりも、母親が下書きすらも捨てられなかったことに衝撃を受けた。これはたぶん、主人公と母親の関係を、自分と自分の母親の関係にスライドしているという側面もあると思う。

X) その他

実写素材と、アニメーションがフレームを分けられながら物語が進んでいく。我々が「アニメーション」だと思っている方は、ハーツフェルトの描く棒人間の世界のビデオカメラで撮影された実写素材で、「実写素材」だと思っている方は、ハーツフェルトの描く棒人間の世界のイラストに相当するように感じた。つまり、それぞれの技法に負わせられる役割が一般のそれとは逆。これは似たようなことを土居さんも指摘していたような気がする。

第18回学生CGコンテストのコメント発表

先日のミーティングで決定されたノミネート作品50作品がコメントとともに公式ウェブサイト上で発表された。

自分がコメントを執筆したのは下記の作品。

去年もそうだったんだけど、評価以上に緊張するのがこのコメント執筆だったりする。そのせいかかなり抑制的な書き方になってしまい(←それで良いと思うんだけど)、馬さんのコメントの破壊力に凹む。