風立ちぬ

宮崎駿の「風立ちぬ」を観た。以下、ネタバレ。

感動して涙が出た。しかし、一体何に感動をしたのか、自分でもよく分からない。もしあの作品のテーマとか作者のメッセージにあたるものを一言で言い表すとすれば、「美しいということはもろく、はかない」ということだ。しかし、全体の物語は、グリッチのように断片的に展開していき、また唐突に物語に関係のない細部に潜っていくため、理論的に順を追って物語を思い出して行っても、自分の感情の糸口をつかむことは出来ない。

あと、この作品は、「崖の上のポニョ」の後半、津波以降の物語からつながっているように感じた。津波以降の物語にただよう、白昼夢のような、死後の世界のような、独特の現実からの浮遊感が「風立ちぬ」全体を貫いている。そこに、人間の声を加工した効果音であるとか、庵野秀明の演技ならざる演技が加わり、その浮遊感をより強化している。なんというか、いろいろとよく見えてる。

「崖の上のポニョ」を観た時、この作品が宮崎駿のキャリアの分岐点となって、後期宮崎駿へと移行するのだという話をよくした。彼の残された時間を考えると、その可能性は薄いだろうし、また「ポニョ」が老人力がもたらすある種のフロック(偶然)なのではないかと疑っていたことの裏返しだったのだが、「風立ちぬ」はまさしく「ポニョ」以降の宮崎駿のさらなる進境をみせつける作品だった。ボケながらも覚めている、というか雄弁に語らないというか、神がかり的な宙吊り状態にある作品だと思う。信じられない。

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